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輸液製剤協議会

医療過誤防止に向けての取り組み

輸液製剤に関連するヒヤリ・ハット事例

1)目的、対象と方法

輸液製剤の医療過誤防止対策の課題を見いだすことを目的とし、2010 年 4 月 ~ 2015 年 3 月を発生年月として報告された「薬剤」に関するヒヤリ・ハット事例 25,556 事例から「輸液関連事例」(3,081件)を抽出しました。

2)ヒヤリ・ハット事例の分類(図1)

  • ヒヤリ・ハットの要因として、輸液製剤そのものが関わった「輸液製剤関連」事例は 566 件で、輸液製剤が直接要因ではない「その他の間違い」事例は 2,515 件、また「輸液関連ではない」事例は、22,475 件でした。
ヒヤリ・ハット事例の分類

図1. 「薬剤」に関するヒヤリ・ハット事例の分類

3)輸液製剤関連事例の内訳と件数(図2)

  • 薬品名間違いが268件と最も多くを占めており、次いで容量間違いが136件、隔壁未開通(中央)が101件などでした。
輸液製剤関連事例の内訳と件数

図2. 輸液製剤関連事例の内訳と件数

4)薬品名間違いの主な内容と事例数(図3)

  • 細胞外液補充液と維持液の間違いが45件で最も多くを占めており、 次いで、開始液と維持液も間違いが34件、糖液と生食の間違いが28件などでした。
  • なお、その他の輸液の取り間違い事例は、85件でした。
  • 図3の網掛け部分は、同一ブランド名の薬品名間違いであり、全体の36.3%を占めていました。
薬品名間違いの主な内容と事例数

図3. 薬品名間違いの主な内容と事例数

<考察>
輸液製剤の取り違え防止対策については、低張電解質製剤の使用目的からみた分類名称の統一および記載を行いました(輸液製剤の取り違え防止対策について)が、未だに薬品名間違いはヒヤリ・ハット事例の約半数を占めていました。
その中で同一ブランドの薬品名間違いのほか、溶解希釈液の選択間違いや汎用輸液との間違い等が63.7%とより多くを占めたことから、「いつもはこの輸液だから…」との思い込みの要因も大きいと推察されました。
このように、薬品名間違いは容量間違いや濃度間違いも含め、その背景には、思い込みや確認不足などのヒューマンエラーの要因が大きいことから、指示内容と輸液本体の照合確認や、ダブルチェックの確実な実施等が必要であると考えられました。

5)隔壁未開通(中央)の件数と推移(図4)

  • 2005年度の隔壁未開通(中央)の件数は35件で、薬剤ヒヤリ・ハット事例の総報告件数の20.5%もありましたが、その後、件数および割合のいずれも低く推移するようになしました。
隔壁未開通(中央)の件数と推移

図4. 隔壁未開通(中央)の件数と推移

<考察>
隔壁未開通投与防止対策については、いくつかの取り組みを行ってきました(二槽バッグ製剤の隔壁未開通投与防止対策)。
その後、隔壁未開通投与を防止するための機構を各社が開発・実装し、現在は全てのダブルバッグ製剤において、何らかの対策が施されていますので、非常に低い発生件数にとどまっているものと考えられました。
しかしながら、隔壁未開通(中央部)に至った要因を分析すると、提示している操作手順に従わなかったことが主な要因であることから、手順の遵守が重要であり、新規配属された方々が手順を熟知するような院内教育が、防止対策として有用であると考えられました。

6)その他の間違いの内訳と件数(図5)

  • その他の間違いでは、投与操作系ミスが1,819件と最も多くを占めており、次いで、混注・配合系ミスが140件、患者系ミスが100件などとなっていました。
その他の間違いの内訳と件数

図5. その他の間違いの内訳と件数

7)投与操作系ミスの内訳と件数(図6)

  • 投与速度速すぎが1,037件と最も多くを占めており、次いで過剰投与が139件、投与速度遅すぎが124件などとなっていました。
投与操作系ミスの内訳と件数

図6. 投与操作系ミス事例の内訳と件数

<考察>
輸液製剤に関連する「その他の間違い」事例の中では「投与操作系ミス」が多く、その件数は、輸液製剤関連事例の 3.2 倍も多いことから、その内容把握と対応を模索することは、医療過誤防止対策として重要であると考えられました。

輸液製剤に関するヒヤリ・ハット事例の分析